人手不足や人件費の上昇を背景に、店舗の「無人化」「省人化」への注目が高まっています。
その代表的なサービスの一つが、株式会社TOUCH TO GOが提供する無人決済システム「TOUCH TO GO(TTG)」です。
TTGは、商品を1点ずつバーコードスキャンすることなく、カメラやセンサーによって顧客が手に取った商品を認識し、レジで購入商品を確認して決済できる仕組みを採用しています。
実際にTTGは、2020年にJR高輪ゲートウェイ駅で1号店を開業。その後、無人コンビニ、駅ナカ店舗、ホテル、大学、オフィス、病院、ガソリンスタンドなどへ導入範囲を広げています。2024年10月には「TTG-SENSE」「TTG-MONSTAR」シリーズの導入店舗数が合計200店舗を突破しました。
この記事では、
- TOUCH TO GOの仕組み
- TTG-SENSEなどの製品の違い
- 導入料金・月額費用
- 人件費削減とROIの考え方
- セルフレジとの違い
- Amazon Just Walk Outとの違い
- 実際の導入事例
- 無人化しても残る業務
- 酒類・年齢確認などの注意点
- TTGが向いている店舗・向いていない店舗
まで、導入を検討する事業者の目線から詳しく解説します。
目次
TOUCH TO GO(TTG)とは?

TOUCH TO GO(TTG)は、AIカメラやセンサーなどを活用して、商品の購入から決済までを省人化する店舗システムです。
代表的な「TTG-SENSE」では、顧客が商品を手に取ると、カメラによる人物・購買行動の認識と、棚に設置されたセンサーなどを組み合わせて商品を判別します。
そのため、一般的なセルフレジのように、顧客が商品を1点ずつバーコードスキャンする必要がありません。
TTGの基本的な買い物の流れ
基本的な利用方法は非常にシンプルです。
① 入店する
専用アプリをダウンロードしたり、事前に会員登録したりする必要がないタイプがあります。
② 商品を手に取る
購入したい商品を棚から取ります。
③ システムが商品を認識
カメラや重量センサーなどによって、誰がどの商品を手に取ったのかをシステムが判別します。
④ 決済エリアへ移動
出口付近のディスプレイに購入商品と金額が表示されます。
⑤ 内容を確認して決済
表示内容を確認し、対応する決済手段で支払います。
この「商品を取る→レジでスキャンする」という作業をなくせることが、TTGの大きな特徴です。
TOUCH TO GOはどのような仕組み?
TTGの無人決済を理解するうえで重要なのが、複数のセンサーを組み合わせて顧客の行動を認識している点です。
1.AIカメラによる人物・購買行動の認識
店舗内に設置されたカメラによって、顧客の動きを追跡します。
「誰が」「どの商品を」「手に取ったのか」を把握することで、仮想的な買い物かごをシステム上に作ります。
2.棚のセンサーによる商品認識
カメラだけではなく、棚に設置された重量センサーなどを組み合わせることで、商品の取得・返却を判別します。
TTGは、カメラと重量センサーによるリアルタイムな商品取得データを組み合わせることで、バーコードスキャンを不要にしています。
3.決済時に購入内容を確認
出口付近のディスプレイに購入商品と金額が表示されます。
顧客は内容を確認して決済するため、一般的な「商品を1点ずつスキャンするセルフレジ」とは買い物体験が大きく異なります。
「完全な無人店舗」なの?

ここはTTGを検討するうえで非常に重要なポイントです。
「無人決済」と聞くと、
店員が一人も必要ない
と思ってしまいがちですが、実際には店舗運営に必要なすべての業務がなくなるわけではありません。
TTGが省人化しやすいのは、主に、
- レジ業務
- 会計対応
- 一部の接客
- 店舗内での問い合わせ対応
などです。
一方で、
- 商品補充
- 清掃
- 商品の入れ替え
- 賞味期限・消費期限管理
- 在庫管理
- 店舗メンテナンス
- トラブル対応
などは必要になります。
TTG公式も、TTG-SENSEについて「レジ業務・接客不要」とし、品出しや清掃などを中心とした店舗運営を想定しています。
つまり、正確には
「完全に人が不要になる」のではなく、「レジ・接客に必要だった人員を大幅に減らす」
という考え方が適切です。
TTGの主な製品
TTGには複数の製品・サービスがあります。
代表的なものが「TTG-SENSE」です。
TTG-SENSE
小売店などで利用される無人決済システムです。
AIカメラや重量センサーなどを活用し、商品スキャンなしで購入できる仕組みを提供しています。公式では、200㎡程度の店舗から、自販機ほどの省スペースまで対応可能とされています。
TTG-SENSE MICRO
より小規模な店舗やスペースへの導入を想定したモデルです。
オフィス、病院、工場、駅、ホテルなど、これまで人員配置が難しかった小規模商圏との相性が良いのが特徴です。
TTG-SENSE SHELF
さらに小さなスペースに対応したタイプです。
商品棚1台から展開できるモデルで、公式発表では約2㎡のスペースを使った事例も紹介されています。
つまりTTGは、
「大型の無人店舗を作るためのシステム」だけではありません。
むしろ、
「今まで店舗にできなかった小さな空間を売り場にする」
という使い方が重要になっています。
TOUCH TO GOの料金はいくら?

ここはTTG導入を検討する企業にとって最も気になる部分でしょう。
結論から言うと、店舗規模や製品構成、設備、オプションなどによって料金が変わるため、すべての店舗に共通する一律価格ではありません。
過去に公式発表された料金例では、
| 製品 | 月額利用料の例 |
|---|---|
| TTG-SENSE MICRO | 20万円〜 |
| TTG-SENSE MICRO W | 30万円〜 |
とされています。
ただし、これは2022年の製品発表時の料金例であり、設置費用、冷蔵庫などの購入費用、オプション、保守サービスなどは別途とされています。
そのため、2026年時点で導入を検討する場合は、「月額○万円」と単純に考えるのではなく、個別見積もりを取ることが重要です。
TTGのROIはどう計算する?
TTGを導入するかどうかを判断する場合、単純に「月額利用料が高い・安い」で判断するべきではありません。
重要なのは、
導入によってどれだけ人件費・機会損失・営業時間などを改善できるか
です。
例えば、有人店舗でレジ対応のために常時2人を配置していたとします。
仮に、
- レジ・接客関連人件費:月100万円
- TTG導入後の店舗運営人件費:月50万円
- TTG関連費用:月30万円
だった場合、
導入前
100万円
導入後
50万円+30万円=80万円
月間改善額
100万円-80万円=20万円
となります。
この場合、単純計算では年間240万円の改善です。
もちろん実際には、
- 初期設備費
- 内装費
- 通信費
- 保守費
- 決済手数料
- 商品ロス
- 電気代
- 清掃費
- システム障害時の対応費
なども考慮する必要があります。
ROIを計算するときに見るべき5項目
TTGの導入効果を判断するときは、次の5項目を確認しましょう。
① 人件費
最も分かりやすい効果です。
レジ担当者を何人減らせるのか、営業時間全体でどれくらいの人員を削減できるのかを計算します。
② 営業時間
TTGによって営業時間を延長できるのであれば、売上増加もROIに含める必要があります。
例えば、
「昼間だけ営業していた売店を24時間営業にする」
といった使い方です。
③ 出店可能エリア
ここがTTGの非常に重要なポイントです。
これまで、
人を置けないから出店できない
と判断していた場所でも、省人化によって出店できる可能性があります。
病院、大学、オフィス、工場、ホテル、駅、ガソリンスタンドなどが代表例です。
④ レジ待ちによる機会損失
有人レジで行列が発生すると、
「買うのをやめる」
「別の店に行く」
という顧客が発生する可能性があります。
商品スキャンを不要にすることで、会計時間を短縮できれば、この機会損失の改善も期待できます。
⑤ 多店舗展開
1店舗だけではなく、
「10店舗、50店舗、100店舗に展開できるか」
という視点も重要です。
人材不足が深刻な企業ほど、省人化システムの導入によって出店戦略そのものが変わる可能性があります。
セルフレジとTTGの違い

「それならセルフレジでいいのでは?」
という疑問も当然あります。
両者の最大の違いは、
商品をスキャンする作業が必要かどうか
です。
| 比較項目 | TTG | 一般的なセルフレジ |
|---|---|---|
| 商品スキャン | 原則不要 | 必要 |
| レジ操作 | 少ない | 顧客が操作 |
| 商品を1点ずつ読み取る | 不要 | 必要 |
| 店員によるレジ対応 | 大幅削減可能 | 削減可能 |
| 無人店舗との相性 | ◎ | ○ |
| 小規模店舗との相性 | ◎ | ○ |
| 初期導入 | システム構成による | 比較的導入しやすい |
セルフレジは、
「レジ業務を顧客に移す」
仕組みです。
一方、TTGは、
「商品スキャンそのものをなくす」
ことを目指した仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
Amazon Go(Just Walk Out)との違い
海外の無人店舗技術として有名なのが、Amazonの「Just Walk Out」です。
Amazon Just Walk Out Technology公式サイト
Just Walk Outも、コンピュータービジョン、センサー、機械学習などを組み合わせ、顧客が商品を取ったり戻したりする行動を認識します。決済方法によって、入店時に支払手段を認証する方式や、退店時に決済する方式があります。
比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | TOUCH TO GO | Amazon Just Walk Out | 一般的なセルフレジ |
|---|---|---|---|
| 商品スキャン | 不要 | 不要 | 必要 |
| カメラ・センサー | 活用 | 活用 | 基本不要 |
| AIによる商品認識 | 活用 | 活用 | 基本不要 |
| 専用アプリ | 不要の構成あり | 支払い方法による | 不要 |
| 退店時の確認 | あり | 方式による | あり |
| 日本での展開 | 強い | 海外中心 | 非常に多い |
| 小規模店舗 | ◎ | ○ | ◎ |
| マイクロマーケット | ◎ | ○ | ○ |
特にTTGは、日本国内の駅・オフィス・大学・病院・ホテルなど、比較的小規模な商圏への導入事例が多い点が特徴です。
TTGの導入事例
TTGの特徴を理解するには、実際の導入先を見るのが最も分かりやすいでしょう。
公式の導入事例では、以下のような業態が紹介されています。
- 駅ナカ
- コンビニ
- ホテル
- 大学
- オフィス
- 病院
- ガソリンスタンド
- スポーツ施設
- スキー場
- 社員食堂
- 商業施設
高輪ゲートウェイ駅
TTGの1号店として有名なのが、JR高輪ゲートウェイ駅の店舗です。
2020年3月23日に開業し、当初は弁当、惣菜、菓子、飲料など約600種類の商品を取り扱う店舗としてスタートしました。
オフィス・職域売店
TTGは、一般消費者向けの店舗だけでなく、オフィス内の職域売店にも利用されています。
例えば東芝テックのオフィス内売店や、大学キャンパス内の売店などにも導入事例があります。
ホテル
ホテル内の無人コンビニにも導入されています。
宿泊客が夜間でも買い物できるため、ホテルスタッフが店舗専任として常駐する必要を減らしながら、利便性を高められる点がメリットです。
なお、酒類販売については、導入事例ではフロントスタッフによる年齢確認を行う運用が紹介されています。
駅ナカ・狭小スペース
最近では、さらに小さなスペースに対応する「TTG-SENSE SHELF」も登場しています。
公式発表では、約2㎡のスペースに商品棚と決済機能を組み合わせた事例が紹介されています。
2026年の注目事例「KEIKYU PIT」
2026年9月には、京急グループ初の無人決済店舗「KEIKYU PIT 京急ストア浦賀店」がオープンしました。
浦賀駅改札内に設置され、弁当、おにぎり、パン、飲料、菓子など約300〜400品目を取り扱います。
決済は交通系IC、クレジットカード、バーコード決済、電子マネーに対応し、現金には対応していません。
この事例からも、TTGが「大型無人コンビニ」だけではなく、
駅構内の限られたスペースを活用した小型店舗
へ展開されていることが分かります。
TTG導入のメリット
メリット1:レジ人員を削減できる
最大のメリットです。
有人レジに必要だった人員を削減し、品出し・清掃などの業務に集中させることができます。
メリット2:24時間営業との相性が良い
深夜時間帯にスタッフを配置する必要がなくなれば、24時間営業を実現しやすくなります。
実際にTTGでは24時間営業の無人店舗事例も存在します。
メリット3:小さなスペースでも出店できる
TTG-SENSEシリーズには、小規模スペース向けの製品があります。
そのため、
- オフィス
- 病院
- 大学
- 工場
- ホテル
- 駅
- ガソリンスタンド
など、従来のコンビニ出店には向かなかった場所も候補になります。
メリット4:レジ待ちを減らせる
商品を1点ずつスキャンする必要がないため、会計時の作業量を減らせます。
メリット5:人手不足でも店舗展開しやすい
TTGの本当の価値は、単純な人件費削減だけではありません。
「人が集まらないから出店できない場所に出店できる」
という点にあります。
TTG導入のデメリット・注意点
一方で、導入すれば必ず利益が増えるわけではありません。
① 商品補充は必要
無人店舗でも商品が自動的に補充されるわけではありません。
売上が多い店舗ほど、品出し作業が重要になります。
② 清掃・衛生管理が必要
食品を扱う店舗では、清掃や衛生管理も必要です。
③ 商品認識エラーへの対応
顧客が商品を別の場所に戻す、商品を手に持ったまま移動するなど、複雑な行動が発生すると認識精度に影響する可能性があります。
そのため、システムだけに頼るのではなく、問い合わせ対応や遠隔サポートなどを含めた運用設計が重要です。
TTGでは、スタッフや利用客の困りごとをコールセンターでサポートする体制も案内されています。
④ 酒類などは別途オペレーションが必要
酒類など年齢確認が必要な商品を扱う場合、完全無人で完結できるとは限りません。
実際のTTG導入事例でも、ホテル店舗では酒類購入時にフロントスタッフが年齢確認を行っています。
⑤ 導入費用だけで判断してはいけない
「月額料金が高いから導入しない」という判断も危険です。
重要なのは、
導入費用 < 削減できる人件費+増加する売上+出店可能になる価値
になるかどうかです。
TTGが向いている店舗
TTGが特に向いているのは、次のような店舗です。
◎ 非常に相性が良い
- オフィス内売店
- 病院内売店
- 大学内売店
- 工場内売店
- ホテル内コンビニ
- 駅ナカ売店
- 小規模コンビニ
- ガソリンスタンド内売店
- スポーツ施設
- スキー場
○ 条件次第で向いている
- スーパー
- 商業施設
- お土産店
- ドラッグストア
- 飲食店
△ 慎重に検討したい
- 高度な接客が必要な店舗
- 商品説明が頻繁に必要な店舗
- 商品の個別包装が多い店舗
- 年齢確認商品が非常に多い店舗
- 現金対応を必須とする店舗
TTGを導入する前に確認したい10項目
導入を検討するなら、以下を確認しましょう。
- 1日の来店客数
- ピーク時間帯の来店客数
- 平均客単価
- 商品数(SKU)
- 現在のレジ人件費
- 深夜・早朝の人件費
- 商品補充に必要な時間
- 清掃・在庫管理の負担
- システム導入費・月額費用
- 導入後に何人のスタッフを削減できるか
特に重要なのが、
「現在の店舗運営コスト」と「TTG導入後の店舗運営コスト」を比較すること
です。
まとめ:TOUCH TO GOは「無人化」より「出店戦略」で考える
TOUCH TO GOは、単なるセルフレジではありません。
カメラやセンサーを利用して商品スキャンを省略し、レジ業務を大幅に省人化できることが大きな特徴です。
そして、TTGの本当の価値は、
「人手不足によって出店できなかった場所に、新しい店舗を作れる可能性がある」
ことにあります。
特に、
- 駅
- 病院
- 大学
- オフィス
- 工場
- ホテル
- ガソリンスタンド
などの「小さな商圏」と相性が良く、実際にさまざまな導入事例があります。
一方で、無人化しても商品補充、清掃、在庫管理、期限管理、トラブル対応などは残ります。
そのため、
「完全無人になるか」ではなく、「どの業務を何%省人化できるか」
という視点で導入効果を計算することが重要です。
TTGの導入を検討している場合は、まず自社店舗について、
人件費・営業時間・客数・客単価・商品数・店舗面積
を整理し、導入前後の収支をシミュレーションしてみましょう。
